クイズ殺人

物心ついた時からずっと、なぜか僕は「今までの人生の中で知り得た知識、目にしたものの中からクイズを出題されて、それに答えることができなかったら殺される」という妄想にとりつかれています。

 

どういうことかわからない人も多いと思うので例を挙げて解説をすると、僕がバイトしているコンビニには、レジから見える位置に、下町のナポレオンこと、「いいちこ」やらそのコンビニチェーンのブランド商品である「芋焼酎」というあまりにも正直すぎるネーミングの芋焼酎やらが陳列されています。僕はそれを時折視界の片隅に感じながらアルバイトの時間を過ごしていました。

 

数年後、社会人になった僕は、かつて働いていたバイト先の事を意識するでもなく日々の仕事に追われていました。するとある日突然、ロングコート姿で片手にはリボルバー式の銃を持った男が、「貴方がかつて働いていたコンビニで、レジから見える紙パックの酒がありましたよね、その商品名はなんですか?全て答えてください」とクイズ!ボディアンドブレインの時の関口さんのように僕に問いかけてきます。

 

焦りながらも僕は「いいちこ!」「芋焼酎!セブンイレブンの!」と答えますが、なにかその隣にもう一つ紙パック酒があったような、何だっけ、何だっけ、と考えている内に「時間切れでーす!あと一つは黒霧島でしたー!」とやはり関口さんのように答えあわせをし、「あぁ、黒霧島かぁ!!」と僕が言い終わるか終わらぬうちに銃が火を噴きます。

 

 

こんな妄想をもう十数年しているのです。ざっくり言うと「何かを忘れたころにその何かにまつわるクイズを出されて間違えると射殺される」というもので、その妄想から抜け出せない僕は、いつどのタイミングで出題されてもいいように視界に入ったものをなるべく意識して記憶に焼き付けるようにしています。一問正解するごとにその殺し屋は身を引き、忘れたころにまた違う問題を引っ提げて戻ってくるので油断はできないのです(まだ一度も遭遇したことはありませんが)。

 

 

正直、まったく楽しくない妄想なので、なんで自分がこんなことを考え続けているのかが不思議でなりません。ですが最近、その妄想の正体が少しわかって来たような気がします。

 

 

 

 

 

それは